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犬の慢性胆嚢炎に対しロボット支援下胆嚢摘出術を実施した1例

胆嚢内の胆泥や胆石様構造物が増加すると、慢性胆嚢炎や胆道閉塞へ進行する可能性があり、外科的介入を検討することがあります。本症例では腹部超音波検査で胆嚢壁肥厚と胆泥・胆石様構造物の増加を認め、慢性胆嚢炎が疑われたため、ロボット支援下胆嚢摘出術を実施しました。術後は一時的に炎症反応の上昇と創部由来の漿液排出がみられましたが、腹腔内に明らかな重篤合併症は確認されず、内科治療と入院管理で改善しています。犬だけでなく猫でも胆道疾患は無症状に進行することがあるため、定期的な画像評価と動物病院での早めの相談が重要です。

症例の概要

• 動物種:犬(トイ・プードル)
• 年齢:9歳齢
• 性別:オス(去勢済)
• 体重:2.54kg
• 主訴:胆泥貯留・胆石症に対する外科治療相談
• 検査:血液スクリーニング検査、凝固系検査、胸部レントゲン検査、腹部超音波検査、心電図検査、血圧測定、細菌培養検査、病理組織検査
• 診断名:慢性胆嚢炎/胆石症
• 術式:ロボット支援下胆嚢摘出術、肝生検
• 担当獣医師名:金井 詠一(軟部外科部門)、岡本佳与(消化器部門)

来院時の様子と検査・診断の流れ

健康診断で胆泥の増加を指摘され、ウルソ投与下でも胆嚢内の高エコー構造物と胆嚢壁肥厚が持続していました。腹部超音波検査では可動性の高エコー胆泥と混濁した胆泥が混在し、胆石様構造物や胆嚢壁の軽度肥厚が確認されました。総胆管拡張は明らかではありませんでしたが、今後の細菌性胆嚢炎や肝外胆管閉塞リスクが懸念され、外科治療を選択しています。鑑別としては胆石症、慢性胆嚢炎、胆嚢粘液嚢腫などが挙げられます。術後に提出された胆汁の培養結果ではE. coliが確認され、臨床経過とあわせて慢性胆嚢炎を支持する所見と考えられました。

手術内容の説明

本症例ではロボット支援下で胆嚢を漿膜下から剥離し、胆嚢管を閉鎖・切断して胆嚢摘出を行いました。あわせて肝外側左葉・内側左葉から肝生検を実施し、胆道疾患に関連する肝実質の評価につなげています。期待できることは、感染源や炎症源となる胆嚢の除去による再燃リスク低減と、胆道閉塞の予防です。一方で、胆嚢摘出後も胆汁漏出、術後炎症、創部感染、消化管運動低下などのリスクが残るため、術後の慎重な観察が重要です。

麻酔管理と術中のポイント

小型犬の長時間腹腔鏡・ロボット手術では、循環維持、換気管理、体温保持を軸とした麻酔管理が重要です。本症例では動脈カテーテル、尿道カテーテルを留置し、腰仙椎硬膜外麻酔と傍脊椎ブロックを併用して疼痛管理を行いました。術後はICUで呼吸状態、尿量、腹水の有無、胃内容停滞を継続的に評価しています。
安全に最大限配慮しながら麻酔管理を行いましたが、どのような麻酔にも一定のリスクは伴います。

術後の経過と今後の注意点

術後早期は胃内容停滞と軽度の腹式呼吸に注意しながら集中管理を行い、2日後日にいったん退院しました。その後、発熱と疼痛様行動、創部からの血様漿液排出のため飼い主さまのご希望により再入院となりましたが、腹部超音波検査では腹腔内に強い炎症起点となる所見は乏しく、創部管理と抗菌薬投与、経時的なCRP評価で改善しました。培養結果を踏まえて感受性のある抗菌薬を継続し、約2週間後にはCRPが低下し退院に至っています。

ご家庭で注意してほしいポイント

  • 元気消失、震え、祈りのポーズ、落ち着かなさがあれば早めに受診する
  • 創部の赤み、腫れ、滲出、においの変化があれば相談する
  • 嘔吐、食欲低下、腹部の張り、排便異常が続く場合は受診を検討する
  • 処方薬は自己判断で中止せず、指示どおりに投与する
  • 再診での血液検査や超音波検査の予定を守る

同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ

胆泥や胆石様構造物が持続する症例では、無症候でも胆嚢壁変化や細菌感染の併発に注意が必要です。ロボット支援手術を含む低侵襲手術は有用な選択肢になり得ますが、術後炎症と創部トラブルの評価を丁寧に行い、培養結果に基づく抗菌薬選択まで含めて一次病院と共有すると、その後の管理が円滑になります。

FAQ

Q1. 胆泥があるだけでも手術は必要ですか?
A. すべての症例で手術が必要になるわけではありません。胆嚢壁変化、胆石様構造物の増加、臨床症状の有無をあわせて判断します。

Q2. 術後に炎症反応が上がることはありますか?
A. あります。術後炎症は一定程度みられますが、発熱や創部異常、腹腔内所見を合わせて感染やSSIを評価することが重要です。

Q3. 胆嚢を摘出しても生活に支障はありませんか?
A. 一般的には日常生活は可能ですが、術後しばらくは消化器症状や創部の変化に注意が必要です。通院回数や必要なお薬は、状態や術後経過によって変わります。 ※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。

※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なりま