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猫の消化管内異物に対し腸切開による異物摘出術を実施した1例

猫では、おもちゃの誤飲により反復する嘔吐や食欲低下を呈し、消化管閉塞へ進行することがあります。本症例ではシリコン製おもちゃの誤飲後に嘔吐が続き、画像検査で空腸近位の異物と消化管内容の停滞を認めたため、緊急で腸切開による異物摘出術を実施しました。術後経過は概ね良好で、抜糸時には創部も安定していました。犬や猫で食べても吐いてしまう状態が続く場合は、早めに動物病院での評価が重要です。

症例の概要

• 動物種:猫(ラガマフィン)
• 年齢:1歳7ヶ月齢
• 性別:メス(避妊済)
• 体重:3.5kg
• 主訴:シリコン製おもちゃの誤飲後の反復嘔吐、食欲低下
• 実施検査:血液スクリーニング検査、電解質検査、腹部X線検査、腹部超音波検査、血液ガス検査
• 診断名:消化管内異物
• 実施術式:腸切開による異物摘出術
• 併存所見:多発性嚢胞腎の可能性、肝酵素上昇
• 担当獣医師名:金井 詠一(軟部外科部門) 、塚原 昌史(救急外来)

来院時の様子と検査・診断の流れ

シリコン製おもちゃを誤食し、翌日まで未消化物や胃液の嘔吐を繰り返していました。腹部超音波検査では空腸近位にシャドーを伴う構造物を認め、胃幽門付近から空腸近位まで液体貯留がみられたことから、通過障害を伴う消化管内異物が強く疑われました。腹部レントゲン検査でも小腸内異物が確認され、自然排出は困難と判断しました。血液検査では低カリウム血症、脱水、ALT上昇がみられましたが、腎数値は大きく逸脱していませんでした。

▲腹部超音波画像

手術内容の説明

開腹下に十二指腸、空腸、回腸を確認し、空腸領域に直径約1cmの球状異物を認めました。空腸の対腸間膜側を切開して摘出し、腸切開部は単純結節縫合で閉鎖しました。期待できることは閉塞解除による嘔吐改善と消化管障害、バクテリアトランスロケーションの回避です。一方で、術後には縫合部の離開、腹膜炎、食欲不振の遷延などのリスクが残るため、入院下での観察が重要です。

▲空腸から摘出した異物

麻酔管理と術中のポイント

消化管閉塞症例では、脱水や電解質異常、循環変動に配慮した麻酔管理が重要です。本症例でも全身麻酔下で手術を実施し、術中には動脈カテーテルと静脈ラインを用いて循環管理を行いました。
安全に最大限配慮しながら麻酔管理を行いましたが、どのような麻酔にも一定のリスクは伴います。

術後の経過と今後の注意点

術後はICU管理下で体温、呼吸、食欲、腹水の有無を確認し、合併症は認めませんでした。食欲は徐々に改善し、給餌を段階的に進め、術後5日で退院しました。抜糸時には創部は良好でした。

ご家庭で注意してほしいポイント

  • 誤飲しやすいおもちゃやひも状物を生活環境から遠ざける
  • 嘔吐、食欲低下、元気消失が再びみられたら早めに受診する
  • 術創を舐めないようにし、赤み・腫れ・滲出があれば相談する
  • 便の性状や異物片の排出の有無を観察して共有する
  • 再診や抜糸の予定を守る

同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ

若齢猫の誤飲症例では、異物の材質や形状によってはレントゲンで評価しづらく、超音波検査が診断の助けになります。消化管内容停滞と消化管内異物の所見がそろう場合、自然排出の見込みを慎重に見極め、早期の外科介入を検討することが重要です。偶発的に認められた多発性嚢胞腎のような所見も、術後の中長期管理につなげる視点が有用です。

FAQ(よくある質問)

Q1. 異物を吐いたあとでも手術が必要になることはありますか?
A. あります。吐物に一部が出ていても、残片が小腸で閉塞を起こしている場合があります。

Q2. 術後はいつから食事を再開できますか?
A.術後早期に少量ずつ再開します。

※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。