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猫の膀胱原発高悪性度リンパ腫を細胞診・クローナリティー検査にて診断し、化学療法を検討した1例

高齢の猫で頻尿や血尿などがみられる場合、膀胱炎だけでなく膀胱腫瘍が背景にあることがあります。本症例では腹部超音波検査で膀胱三角部から尿道近位にかけて壁肥厚を認め、細胞診では未分化な上皮系悪性腫瘍、特に移行上皮癌が第一に疑われました。一方で、リンパ球クローナリティー検査でB細胞性クローンが確認され、最終的に膀胱原発の高悪性度リンパ腫と診断しました。L-アスパラギナーゼ投与後には病変縮小と排尿状態の改善がみられており、現在化学療法を継続中です。排尿異常が続く場合は、犬や猫いずれも早めに動物病院で評価することが大切です。

症例の概要

• 動物種:猫(MIX)
• 年齢:13歳齢
• 性別:メス(避妊済)
• 体重:3.98kg
• 主訴:頻尿、食欲低下、不適切排尿
• 検査:血液スクリーニング検査、尿検査、胸腹部レントゲン検査、腹部超音波検査、膀胱壁カテーテル破砕吸引生検、細胞診、リンパ腫クローナリティー検査
• 診断:膀胱原発高悪性度リンパ腫
• 担当獣医師:松田 裕樹(腫瘍部門)

来院時の様子と検査・診断の流れ

本症例では不適切排尿と頻尿がみられ、食欲も低下していました。初診時の腹部超音波検査では、膀胱壁がほぼ全周性に肥厚し、中央部から尾側、尿道入口にかけて6〜7.8mmの肥厚と層構造消失を認めました。両側腎盂の軽度拡張もあり、尿流出障害に伴う腎後性変化が懸念されました。胸部レントゲン検査では明らかな転移所見は認められていません。
尿検査では感染を強く示す所見に乏しく、膀胱壁カテーテル破砕吸引生検ではリンパ球様細胞が多数確認されました。外注の細胞診では未分化な上皮系悪性腫瘍、特に移行上皮癌が第一に考えられる所見でしたが、クローナリティー検査でB細胞性クローンが確認されたため、最終的に膀胱原発の高悪性度リンパ腫と診断しました。鑑別としては、膀胱炎、尿路上皮癌、その他の膀胱壁腫瘍性疾患が挙げられます。

治療内容の説明

リンパ腫は診断時点で全身的に浸潤していることを想定した治療が必要であり、化学療法が選択肢として推奨されることが多いです。本症例についても、化学療法を選択しています。期待できることは、腫瘍負荷の軽減による排尿障害の改善と、尿路閉塞に伴う腎機能悪化の予防、生存期間の延長です。一方で、膀胱三角部から尿道にかけて病変が生じる症例では再閉塞のリスクがあり、また化学療法に伴う副作用にも注意が必要です。

経過と今後の注意点

プレドニゾロン開始後には下痢や嘔吐がみられ一時休薬となりましたが、その後はL-アスパラギナーゼ投与も含めて病変は著しく縮小しました。第11病日の再評価では、膀胱壁は膀胱三角部から近位尿道にかけて1.0〜2.5mmの軽度肥厚を残すのみで、両側の腎盂拡張は認められず、排尿状態も良好でした。
今後の治療として、COPベースの化学療法を提示し、現在継続中です。

ご家庭で注意してほしいポイント

  • 頻尿、排尿姿勢をとるのに尿が出ない、血尿があれば早めに受診する
  • 食欲低下、嘔吐、下痢が続く場合は治療の副作用も含めて相談する
  • 飲水量、尿量、元気の変化を記録して共有する
  • 処方薬は自己判断で中止せず、必ず主治医に相談する
  • 再診での超音波検査や血液検査の予定を守る

同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ

猫の膀胱非常は稀ですが、近年膀胱尿路上皮癌の発生が増えてきている印象があります。本症例はリンパ腫の診断でしたが、細胞診にて未分化な上皮系悪性腫瘍の細胞形態とリンパ腫の細胞形態が類似することがあり、そのような場合はリンパ腫を鑑別診断に考えてリンパ球クローナリティー検査を追加することで診断精度を高め、治療につなげる事ができます。

FAQ(よくある質問)

Q1. 膀胱リンパ腫は手術で取れますか?
A. 病変の部位や広がりによっては外科切除が難しいことがあり、化学療法が中心となる場合があります。

Q2. 頻尿だけでも腫瘍の可能性はありますか?
A. あります。膀胱炎に似た症状でも、画像検査で腫瘍性病変が見つかることがあります。

Q3. 化学療法を始める前に何を確認しますか?
A. 一般的には全身状態、血液検査、感染リスク、排尿状態などを確認します。通院回数や必要なお薬は、状態や術後経過によって変わります。

※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。