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猫の消化管内異物に対し腸切開による異物摘出術を実施した1例

猫では、比較的小さなオモチャや異物でも、誤飲により腸閉塞を起こすことがあります。本症例では、胃幽門部から十二指腸付近の閉塞が疑われ、腹部レントゲン検査と腹部超音波検査を踏まえて消化管内異物と判断し、腸切開による異物摘出術を実施しました。術後はICU管理下で体温、呼吸、尿量、食欲の回復を確認し、段階的に給餌を再開しています。繰り返す嘔吐や食欲低下がみられる場合は、犬だけでなく猫でも早めに動物病院での評価が重要です。

症例の概要

• 動物種:猫(ラグドール)
• 年齢:0歳7ヶ月齢
• 性別:オス(去勢済)
• 体重:4.12kg
• 主訴:2日前からの嘔吐、胃幽門部〜十二指腸の腸閉塞疑い
• 検査:腹部レントゲン検査、腹部超音波検査、血液スクリーニング検査、血液凝固検査、血液ガス検査
• 診断:消化管内異物/誤飲
• 術式:腸切開による異物摘出術
• 担当獣医師:藤田 淳(軟部外科部門)

来院時の様子と検査・診断の流れ

胃幽門部から十二指腸付近に閉塞が疑われる猫の患者として来院しました。来院時は呼吸数42回/分、心拍数180回/分で、反復する嘔吐の既往があり、消化管通過障害が強く疑われる状況でした。腹部レントゲン検査と腹部超音波検査を実施し、画像診断医の評価も踏まえて消化管内異物と判断しました。凝固検査を含む術前検査を行い、全身麻酔下での外科介入が可能かを確認しました。鑑別としては、重度の胃腸炎、腸重積、腫瘤性病変などが挙げられました。

手術内容の説明

腸切開術の目的は、閉塞を解除して腸管の血流障害や穿孔を防ぎ、嘔吐や食欲不振の改善につなげることです。期待できることは、消化管通過の回復と全身状態の改善です。一方で、術後には縫合部トラブル、腹膜炎、食欲不振の遷延などのリスクが残るため、慎重な経過観察が必要です。
本症例では、開腹下で、消化管を確認し、術前の画像検査通り、消化管に異物を発見しました。腸切開を行い、異物を摘出しました。摘出物はボールの破片と思われ、誤飲と考えられました。

麻酔管理と術中のポイント

消化管閉塞症例では、脱水や循環変動、体温低下に注意しながら麻酔管理を行います。本症例でも全身麻酔下で手術を実施し、術後は酸素室およびICUで呼吸、体温、尿量を継続的に評価しました。周術期には必要に応じて抗菌薬や鎮痛薬を用い、術後早期の回復を支える管理が行われています。
安全に最大限配慮しながら麻酔管理を行いましたが、どのような麻酔にも一定のリスクは伴います。

術後の経過と今後の注意点

術後はICUケージで復温し、翌日から流動食給餌を開始し、段階的に摂取量を増やしました。手術2日目には消化器用ウエットフード、3日後には必要量100%を目標に給餌し、全身状態が安定したため予定より1日早く退院となりました。ご自宅が遠方であったため、抜糸は原則としてかかりつけ病院で行う方針としました。

ご家庭で注意してほしいポイント

  • 退院後しばらくは食事内容を急に変えず、指示されたフードを少量ずつ与える
  • 嘔吐、食欲低下、元気消失、腹部の張りがあれば早めに受診する
  • 術創を舐めないようにカラー等を使用し、赤み・腫れ・滲出があれば相談する
  • 誤飲しやすいおもちゃの破片や小物を生活環境から遠ざける
  • 排便の有無や便の性状も確認し、異常があれば共有する
  • 再診や抜糸の予定は主治医の指示どおりに守る

同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ

消化器症状が強い若齢猫では、飼い主さまから誤飲の稟告がなくとも消化管内異物を疑うことが大切です。比較的短時間でも容態が変化しやすく、画像検査と全身状態の把握を並行して進めることが重要です。高齢動物に比べて術後の回復は早いですが、胃腸運動や感染徴候などに注意して管理します。誤食行動の再発防止策を飼い主さまとよく相談することも大切です。

FAQ(よくある質問)

Q1. 異物を飲み込んでも、必ず手術になりますか?
A. すべての症例で手術になるわけではありませんが、閉塞や持続的な嘔吐がある場合は外科治療が必要になることがあります。

Q2. 術後はいつから食事を戻せますか?
A. 一般的には術後の消化管の動きや嘔吐の有無を確認しながら、流動食から段階的に再開します。

Q3. 再発予防で大切なことは何ですか?
A. 誤飲しやすい物を生活環境から除くことが基本です。通院回数や必要なお薬は、状態や術後経過によって変わります。

※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。