おやつや玩具が喉に詰まると、短時間でチアノーゼや意識低下に至ることがあり、緊急対応が必要です。本症例では夜間に呼吸困難で来院し、鎮静下の咽喉頭観察で異物を確認して鉗子で摘出しました。摘出後は一時的に人工呼吸管理を行い、酸素化が安定したことを確認して抜管しています。犬だけでなく猫でも異物による窒息は起こり得るため、呼吸が苦しそうな場合は速やかに動物病院へ相談してください。
症例の概要
- 動物種:犬(フレンチブルドック)
- 年齢:12歳齢
- 性別:メス(避妊済)
- 体重:16.3kg
- 主訴:おやつのガムが喉に詰まった
- 実施検査:血液検査、血液ガス検査、胸部レントゲン検査
- 診断名:ガムによる窒息
- 処置:鎮静下の咽喉頭観察、鉗子による異物除去、人工呼吸管理(短時間)
- 担当獣医師名:亘 司郎(総合診療部門)
来院時の様子と診療の流れ
自宅でおやつのガムを誤飲し、呼吸が苦しいとの主訴で夜間・救急に来院されました。来院時は上気道閉塞音が顕著で、チアノーゼと流涎・呼吸困難・意識低下を認めました。直ちに血管確保を行い、鎮静下で咽喉頭を観察したところ、咽喉頭を占拠する異物を確認しました。 血液ガス検査では換気不全を示す所見がみられ、呼吸状態の指標として用いました。胸部レントゲン検査では、来院時点で顕著な肺障害は認めませんでした。鑑別としては気道異物のほか、短頭種に関連する上気道閉塞、喉頭麻痺、気管虚脱なども状況に応じて考慮します。
処置内容の説明
本症例の主な処置は、鎮静下での咽喉頭観察と鉗子による異物除去です。異物が気道を塞いでいる場合、まず気道を確保し、視認できる範囲で安全に摘出することが重要になります。
期待できることは、閉塞の解除による呼吸状態の改善です。一方で、除去後も誤嚥性肺炎や陰圧性肺水腫が遅れて発症する可能性があるため、一定時間のモニタリングが必要です。

処置中のポイント
急性の上気道閉塞では、鎮静・挿管・換気の一連の流れを途切れさせないことが重要です。本症例ではプロポフォールと低容量メデトミジンで鎮静し、異物摘出後は人工呼吸管理下で酸素化の推移を確認しました。酸素濃度を段階的に下げ、SpO2と動脈血液ガスでルームエアー下でも酸素化が保てることを確認して抜管しました。
処置後の経過と今後の注意点
異物除去後は入院管理とし、24時間は誤嚥性肺炎や陰圧性肺水腫の発症に注意して経過観察を行いました。状態の悪化がなければ翌日中の退院を予定し、呼吸状態の変化がないかを重点的に評価しました。
ご家庭で注意してほしいポイント
- おやつは大きさ・硬さを見直し、丸飲みしやすい物は避ける
- 食事やおやつの時間は目を離さず、急いで食べる場合は与え方を工夫する
- 咳、呼吸数増加、努力呼吸、ぐったりするなどがあれば早めに受診する
- 嘔吐や食欲低下が続く場合も誤嚥の可能性があるため相談する
- 退院直後は過度な興奮や激しい運動を控え、呼吸の変化を観察する
- 再診の指示がある場合は予定を守る
同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ
上気道閉塞が疑われる症例では、第一に気道確保と酸素化の担保を優先し、鎮静下の迅速な咽喉頭評価が有用です。異物除去後も遅発性の誤嚥性肺炎や陰圧性肺水腫を想定し、胸部画像と血液ガスを含めた再評価のタイミングを共有すると、一次病院でのフォローが円滑になります。
FAQ(よくある質問)
Q1. 異物を取れたのに、なぜ入院が必要ですか?
A. 一般的に、除去後もしばらくは誤嚥性肺炎や陰圧性肺水腫が遅れて出ることがあります。呼吸状態の変化を早期に捉えるため、短期間の観察入院が選択されます。
Q2. 家で「また詰まったかも」と思ったらどうすればよいですか?
A. 口に手を入れると咬傷の危険があるため、無理に取ろうとせず受診を優先します。チアノーゼや意識低下がある場合は緊急性が高い状態です。
Q3. 再発を防ぐために気をつけることはありますか?
A. 丸飲みしやすいガムや小さなおもちゃを避け、食べ方に合わせてサイズや与え方を調整します。猫でも紐状異物などで事故が起こり得るため、家庭内の環境整備が重要です。
※通院回数や必要なお薬は、状態や術後経過によって変わります。
※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。