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犬の前十字靭帯断裂に対し関節鏡検査併用TPLOを実施した1例

大型犬で多い前十字靭帯断裂は、膝(膝関節)の不安定性により後肢の痛みや歩行異常が続くことがあります。本症例では、レントゲン検査と術前の血液・凝固検査で全身状態を評価した上で、左膝関節に対して関節鏡検査を行い、脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)を実施しました。後肢の違和感が続く場合は、犬や猫いずれも早めに動物病院で原因を確認することが大切です。

※ 動画掲載予定

症例の概要

• 動物種:犬(ゴールデン・レトリーバー)
• 年齢:4歳
• 性別:オス(去勢済)
• 体重:48kg
• 主訴:左膝の前十字靭帯断裂が疑われ、手術目的で入院
• 診断名:左前十字靭帯断裂
• 実施検査:レントゲン検査、血液スクリーニング検査、血液凝固検査
• 術式:関節鏡検査+左TPLO
• 担当獣医師名:是枝 哲彰(整形外科部門)

来院時の様子と検査・診断の流れ

前十字靭帯断裂では、膝関節の不安定性(脛骨が前方へずれようとする力)によって疼痛や跛行が生じます。一般的には、歩様評価や整形外科的検査に加えてレントゲンで関節周囲の変化を確認し、必要に応じて脛骨高平部角(TPA)などを評価して術式選択や術後評価に備えます。
本患者では、手術に先立ち血液スクリーニング検査と凝固検査を行い、麻酔・手術に影響する全身性の問題がないか確認しました。鑑別としては、半月板損傷、膝蓋骨疾患、股関節や腰部由来の疼痛なども必要に応じて考慮します。

手術内容の説明

TPLOは、脛骨近位を骨切りして角度を調整し、前十字靭帯が機能しにくくなった膝でも「滑り」を起こしにくい力学に変える手術です。本患者では、関節鏡検査で関節内を観察した上でTPLOを行い、術後の安定性と機能回復を目指しました。
期待できることとして、疼痛の軽減と負重の改善が挙げられます。一方で、感染、インプラント関連トラブル、骨癒合遅延などのリスクは残るため、術後管理と定期的な再診が重要です。

麻酔管理と術中のポイント

本患者では全身麻酔に加えて硬膜外麻酔を併用し、術中は血圧の安定が得られ、覚醒も穏やかでした。周術期は疼痛評価を行いながら、必要に応じて多角的な鎮痛を組み合わせ、呼吸・循環・体温の変化が大きくならないよう管理します。
安全に最大限配慮しながら麻酔管理を行いましたが、どのような麻酔にも一定のリスクは伴います。

術後の経過と今後の注意点

術後は入院下で冷罨法(アイスパック)なども併用し、歩行補助ハーネスを用いた短時間の散歩で、接地と歩行は比較的スムーズでした。退院後の再診では創部の状態を確認して抜糸を行い、必要に応じてレントゲンで骨切り部とインプラントの状態を評価し、運動量を段階的に調整します。

ご家庭で注意してほしいポイント

• 術後しばらくは安静を基本とし、走る・跳ぶ・階段の昇降は避ける
• 室内は滑り止め対策を行い、急な方向転換をさせない
• 散歩は主治医の指示どおり短時間のリード散歩から開始し、運動量を急に増やさない
• 創部を舐めないようカラー等を使用し、赤み・腫れ・滲出があれば早めに受診する
• 内服薬がある場合は指示通りに投与し、嘔吐や元気消失があれば相談する
• 再診(抜糸、レントゲン評価など)の予定を守る

▲術後1ヶ月健診の様子

同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ

大型犬の前十字靭帯断裂では、術前から画像評価と疼痛管理計画を組み立てることで、術式選択と術後リハビリの見通しが立てやすくなります。反対側の膝に問題が出ることもあるため、既往や生活環境を踏まえた運動制限と体重管理の指導、再診タイミングの共有が重要です。

FAQ(よくある質問)

Q1. TPLOのあと、いつから普通に歩けますか?
A. 多くは術後早期から接地が可能になりますが、骨癒合と筋力回復には時間がかかります。再診で評価しながら段階的に運動量を増やします。
Q2. 術後にレントゲン検査は必要ですか?
A. 一般的には骨切り部の癒合とインプラントの状態確認のために行います。実施時期は術後経過により調整します。
Q3. 家で痛がったり腫れたりしたらどうすればよいですか?
A. 運動を中止して安静にし、創部の赤みや熱感、排膿の有無を確認します。悪化や全身状態の変化があれば早めに受診してください。
※通院回数や必要なお薬は、状態や術後経過によって変わります。
※本記事の内容は、当院で実際に診療した一例をもとにした一般的な説明です。
 診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。