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犬の腸トリコモナス症に伴う低血糖に対し救急対応を行った1例

幼齢の犬では、下痢や食欲不振が続くと短時間で低血糖や脱水に進行することがあります。本症例は3ヶ月齢の小型犬で、迎え入れ時から消化器症状と食欲不振が続いており、来院時には昏睡傾向と低血糖を認めました。糞便検査でトリコモナスが確認され、静脈内ブドウ糖投与と内科治療を開始しています。犬だけでなく猫でも幼齢期のぐったりや食欲不振は急変につながるため、早めに動物病院での評価が重要です。

症例の概要

• 動物種:犬(Mix)
• 年齢:0歳3ヶ月齢
• 性別:メス
• 体重:0.72kg
• 主訴:下痢、食欲不振、ぐったり
• 検査:血液スクリーニング検査、血液ガス検査、糞便検査、CPV院内検査
• 診断名:低血糖、腸トリコモナス症
• 処置:静脈カテーテル設置、20%ブドウ糖静脈内投与、メトロニダゾール投与
• 担当獣医師名:亘 司郎(救急部門)

来院時の様子と検査・診断の流れ

本症例は迎え入れ後から食欲不振と軟便が続いており、自宅にて整腸剤や下痢止めを継続していました。来院前日の深夜までは元気だったものの、その後ぐったりして横臥し、夜ご飯も食べられない状態で夜間救急に来院しました。来院時は体温37.3℃、意識は昏睡傾向で、幼齢小型犬としては重篤な全身状態でした。
血液検査ではグルコース8mg/dLと著しい低血糖を認め、総蛋白3.2g/dL、アルブミン1.6g/dLと低タンパク血症も確認されました。あわせてカリウム低下、CRP上昇、白血球増加がみられ、血液ガス検査では代謝性アシドーシスを示す所見が得られています。糞便直接法ではトリコモナスとらせん菌が多数認められ、CPV院内検査は陰性でした。鑑別としてはウイルス性腸炎、他の寄生虫症、敗血症などが挙がりますが、本症例では寄生虫に伴う栄養不良・成長不良を背景とした低血糖が第一に考えられました。

治療内容の説明

本症例では、救急対応として低血糖の是正と腸管感染・炎症への内科治療を優先しました。幼齢患者で重度の低血糖を認める場合、まずブドウ糖補正により意識状態の改善と生命維持を図り、同時に原因疾患への治療を進めることが重要です。
期待できることは、血糖補正による全身状態の改善と、消化管症状の緩和による栄養状態の立て直しです。一方で、低血糖は再発しやすく、腸管障害や摂食不良が続く場合には再び急変する可能性があるため、継続的な評価と一次病院でのフォローが欠かせません。
また救急患者として循環、意識状態、血糖値の変動把握が重要でした。静脈カテーテルを設置して20%ブドウ糖を投与し、退院前にも簡易血糖測定で再評価しています。経過中に再度低血糖発作様症状がみられたため、50%ブドウ糖の経口投与で反応を確認し、転院までの緊急対応方法も飼い主さまへ指導しました。

経過と今後の注意点

初期治療後はいったん日中にかかりつけ病院へ引き継ぐ方針となりましたが、退院前に再び発作様症状がみられ、簡易血糖値38mg/dLを確認しました。50%ブドウ糖の経口投与後には意識状態が改善し、ケアピューレを摂取できるまで回復しています。そのため、転院までの間に再度低血糖となった場合に備え、ブドウ糖液とシリンジ、補助食を処方しました。

ご家庭で注意してほしいポイント

  • 元気消失、ふらつき、ぼんやりする、けいれん様の動きがあれば早めに受診する
  • 食べられない時間が長い場合は低血糖再発に注意する
  • 下痢が続く、嘔吐する、体重が増えない場合は相談する
  • 処方薬は自己判断で中止せず、指示どおりに投与する
  • ブドウ糖液など緊急時の対応方法について主治医の説明を確認しておく
  • 再診での血糖値、栄養状態、便性状の評価を継続する

同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ

幼齢・超小型の犬で慢性的な下痢と食欲不振が続く症例では、来院時の見た目以上に低血糖や低タンパク血症が進行していることがあります。糞便検査で寄生虫が確認された場合も、単なる消化器症状として扱わず、血糖・電解質・酸塩基平衡を含めて全身状態を早期に把握することが重要です。救急対応後は、低血糖再発リスクを飼い主さまと一次病院へ共有すると、その後の管理が円滑になります。

FAQ(よくある質問)

Q1. 低血糖は下痢だけでも起こりますか?
A. 幼齢の犬では、下痢や食欲不振が続くことで摂取量が不足し、低血糖に至ることがあります。

Q2. トリコモナスがいると必ず重症になりますか?
A. すべての症例が重症になるわけではありませんが、幼齢で栄養状態が不安定な患者では全身状態に影響することがあります。

Q3. 自宅で急にぐったりした時はどうすればよいですか?
A. 意識があり嚥下可能であれば応急的に糖分補給が考慮されますが、まずは速やかに受診してください。通院回数や必要なお薬は、状態や経過によって変わります。

※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。