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犬の外耳ポリープに対し腹側鼓室胞切開およびポリープ摘出術を実施した1例

耳の痛みや頭を振るしぐさ、慢性的な耳の違和感が続く場合、外耳道だけでなく中耳の病変が関与していることがあります。本症例では外耳ポリープ摘出と中耳炎に対する腹側鼓室胞切開という外科治療を実施しました。耳科疾患は犬だけでなく猫でもみられ、症状が長引く場合は動物病院での精査が重要です。

症例の概要

• 動物種:犬(フレンチ・ブルドッグ)
• 年齢:3歳齢
• 性別:オス
• 体重:12kg台
• 主訴:耳科疾患に対する手術希望
• 検査:血液スクリーニング検査、血液凝固検査、血液ガス検査、胸部レントゲン検査、頭部CT検査など
• 診断:外耳炎症性ポリープ・中耳炎(真珠腫疑い)
• 術式:腹側鼓室胞切開、外耳ポリープ摘出術
• 担当医:藤田 淳(軟部外科部門)

来院時の様子と検査・診断の流れ

耳道内にポリープが存在する症例では、外耳炎だけでなく中耳病変の関与も考慮する必要があります。鑑別としては、慢性外耳炎、鼓室胞内病変、炎症性ポリープ、腫瘍性病変などが挙げられ、麻酔下でのCT検査が計画されました。麻酔前に全身麻酔へ備えた評価が行われました。血液検査では白血球増加がみられたものの、CRPは大きな上昇を示さず、胸部レントゲン検査も含めて全身状態を確認したうえで、麻酔下でCT検査が行われました。外耳ポリープだけではなく、中耳疾患が疑われ、手術適応と判断されました。

手術内容の説明

外耳ポリープの摘出とあわせて鼓室胞切開を実施しました。腹側鼓室胞切開は、頚部腹側から鼓室胞へ到達して病変を確認・処置する術式です。本症例では、耳道表面のみの処置では再発や病変残存が懸念されるため、中耳の評価と処置を併用しました。期待できることは、耳の不快感や炎症の軽減、病変の除去による再燃リスクの低減です。一方で、耳科手術では創部感染、神経症状、再発、術後の局所腫脹などのリスクが残るため、術後管理と定期検診が重要です。

麻酔管理と術中のポイント

短頭種では気道管理と体温管理、循環の安定化が重要になります。本症例でも全身麻酔管理下で手術が行われ、術中は必要に応じて昇圧薬や麻酔関連薬剤を併用しながら管理されました。術後はICU・酸素室で観察され、疼痛管理、抗菌薬投与、嘔吐予防、消化管保護を含めた周術期管理が継続されています。
安全に最大限配慮しながら麻酔管理を行いましたが、どのような麻酔にも一定のリスクは伴います。

術後の経過と今後の注意点

術後は数日間の入院管理を行い、体温、呼吸数、心拍数、食欲、排尿排便の状態を経時的に確認しました。幸い、入院中に合併症は認められず、退院となりました。
病理組織検査では右外耳炎症性ポリープ、および左鼓室胞の真珠腫と診断されました。いずれの組織においても、明らかな腫瘍性病変は認められませんでした。

▲真珠腫の母膜。角化重層扁平上皮により裏打ちされた病変が認められる。

▲真珠腫の内容物。層状に重積した角質成分が認められる。

ご家庭で注意してほしいポイント

  • エリザベスカラーを指示通りに着用し、手術創をいじらないようにする
  • 創部や耳周囲の赤み、腫れ、滲出、においの変化などがあれば受診する
  • 顔面のゆがみ、ふらつき、強い痛みなど神経症状があれば早めに相談する
  • 内服薬は自己判断で中止せず、指示どおりに投与する
  • シャンプーや激しい運動は主治医の許可が出るまで控える

同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ

慢性的な外耳炎、外耳の炎症性ポリープ、中耳炎や内耳炎が疑われる症例では、CTやMRIなど早めの画像診断が望まれます。特にフレンチブルドッグでは、真珠腫性中耳炎が多く、中耳炎に続発した外耳炎が、難治性外耳炎と誤認されることがあります。また短頭種では、耳科疾患そのものに加えて気道管理上の配慮も必要になるため、麻酔リスクを含めて検討していただければ幸いです。

FAQ(よくある質問)

Q1. 耳のポリープは薬だけで治りますか?
A. 炎症が主体の場合は内科治療で症状が和らぐことがありますが、病変が残る場合は外科治療が検討されます。中耳炎が原因となっていることがあります。

Q2. 術後に耳を気にする様子が少し残っても大丈夫ですか?
A. 術後早期は違和感が残ることがありますが、腫れや疼痛が強い場合は再評価が必要です。

Q3. 再発の可能性はありますか?
A. 病変の性質や残存の有無によっては再発の可能性があります。通院回数や必要なお薬は、状態や術後経過によって変わります。

※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。