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犬の短頭種気道症候群に対しFFP・外鼻孔形成・喉頭小嚢外転切除を実施した1例

短頭種気道症候群(BOAS:Brachycephalic Obstructive Airway Syndrome)では、軟口蓋過長や外鼻孔狭窄、喉頭小嚢外転などが重なり、興奮時のストライダーやチアノーゼ、重度の呼吸困難につながることがあります。基本的には外科的治療が必要で、軟口蓋が長いだけの場合は単純な切除、厚みもある場合はFFP (folded flap palatoplasty)、咽頭自体が閉塞している場合は扁桃切除を含むH字状咽頭形成術などいくつかの選択肢があります。また、狭窄した鼻孔や鼻前庭の形成も必要です。本症例はフレンチ・ブルドッグの患者で、来院時から著しいストライダーとチアノーゼを認め、鎮静、ネブライザー、クーリングによる安定化を要しました。入院下で評価後、長く厚い軟口蓋であったためFFPを選択し、外鼻孔形成術、喉頭小嚢外転切除を追加しました。また、喉頭虚脱と浮腫があったため、一時的気管切開を併用して周術期管理を行いました。犬だけでなく猫でも上部気道症状が長引く場合は、早めに動物病院での評価が重要です。

症例の概要

• 動物種:犬(フレンチ・ブルドッグ)
• 年齢:2歳9ヶ月齢
• 性別:オス(去勢済)
• 体重:9.72kg
• 主訴:興奮時呼吸困難、ストライダー、チアノーゼ
• 検査:胸部レントゲン検査、血液スクリーニング検査、血液凝固検査、血液ガス検査、心エコー検査
• 診断:短頭種気道症候群(軟口蓋過長、外鼻孔狭窄、喉頭小嚢外転)
• 術式:FFP、外鼻孔形成術(楔状切除)、喉頭小嚢外転切除、一時的気管切開
• 担当医:青木 卓磨(呼吸器部門)

来院時の様子と検査・診断の流れ

本患者は興奮時の呼吸困難を主訴に紹介受診し、来院時にも緊張に伴うストライダーとチアノーゼを認めました。まずブトルファノールとアセプロマジンによる鎮静、ボスミンを用いたネブライザー、クーリングで呼吸状態の安定化を図っています。胸部レントゲン検査では著明な腫大を伴う軟口蓋過長と喉頭降下が確認され、身体所見と合わせて短頭種気道症候群と診断しました。鑑別としては鼻炎、喉頭虚脱、咽頭・喉頭周囲の閉塞性病変などが挙がりますが、本症例では上部気道の解剖学的狭窄が主因と判断しました。

手術内容の説明

本症例では、軟口蓋が厚く、かつ長かったため、軟口蓋を筋肉を含め台形に切除して折り返すFFP、外鼻孔の楔状切除による拡大、喉頭小嚢外転切除を実施しました。本症例は喉頭虚脱があること、また術後のさらなる上部気道腫脹に備え、第3気管軟骨部で一時的気管切開を併用しています。期待できることは、吸気抵抗の軽減による呼吸音や睡眠時呼吸障害の改善です。一方で、術後腫脹、分泌物貯留、喉頭虚脱の残存や進行により、呼吸状態が再び不安定になるリスクは残るため、慎重な入院管理が必要です。

麻酔管理と術中のポイント

短頭種の上部気道手術では、導入時・覚醒時の気道確保と、術後腫脹を見越した呼吸管理が重要です。本症例では全身麻酔下で手術を行い、術後は一時気管切開チューブを留置して酸素化、サクション、ネブライジングを継続しました。閉塞試験で呼吸が安定していることを確認したうえで、翌日に気管チューブを抜去し、二期癒合で閉鎖する方針としました。
安全に最大限配慮しながら麻酔管理を行いましたが、どのような麻酔にも一定のリスクは伴います。

術後の経過と今後の注意点

術後はICU・酸素環境下で管理し、チューブ内のサクションとネブライジングを継続しました。手術翌日に閉塞試験を実施し、呼吸が保てたため一時気管切開チューブを抜去しています。その後の入院経過は概ね良好で、術後1週間で退院、さらに約10日後の再診ではいびきや睡眠時呼吸障害、チアノーゼの改善が確認されました。一方で、喉頭虚脱grade2が残存しており、将来的に部分楔状突起切除術や永久気管開口術の検討が必要となる可能性も説明しています。

ご家庭で注意してほしいポイント

  • 興奮、暑熱、激しい運動を避け、呼吸状態が乱れやすい状況を減らす
  • ストライダーの増悪、チアノーゼ、開口呼吸があれば早めに受診する
  • 術後しばらくは指示どおり柔らかい食事を与える
  • 頸部や術創の汚れは指示に従って清拭し、赤みや滲出があれば相談する
  • 来院前投薬の指示がある場合は守り、再診予定を守る

同じ症状の症例を診る獣医療関係者へのメッセージ

重度の短頭種気道症候群では、初診時の安定化と手術適応判断だけでなく、術後の気道管理まで含めた計画が重要です。一時的気管切開を前提にした管理体制を整えておくことで、重度症例でも安全域を確保しやすくなります。退院後も喉頭虚脱の残存や進行を見据え、再診時の呼吸評価を継続することが有用です。

FAQ(よくある質問)

Q1. 手術をするとすぐに呼吸は楽になりますか?
A. 多くの症例で改善が期待されますが、術後腫脹の影響で短期間は管理が必要です。

Q2. 一時的気管切開は必ず必要ですか?
A. 必須ではありませんが、重度の気道狭窄や術後腫脹が懸念される症例では併用が検討されます。

Q3. 再発はありますか?
A. 手術部位そのものの狭窄が再発しなくても、喉頭虚脱など別の要因で症状が残ることがあります。通院回数や必要なお薬は、状態や術後経過によって変わります。

※本記事の内容は、当院で実際に診療した1例をもとにした一般的な説明です。診断や治療の方針は、犬や猫それぞれの状態によって異なります。